月　子：ねえ、博士、前から聞こうと思っていたんだけど博士の家の地下にあるセラー見せてもらった事があったでしょ、その時に気になったんだけど....

シム博士：なんじゃ、遠慮せずに言うてみろ。

月　子：博士の地下のワイン全部腐ってると思うんです。。。

シム博士：.....え！

月　子：だってほとんどのワインが瓶の下の部分に泥みたいなのが溜まってたんですもの

シム博士：.....いかん、それは一大事じゃ！
月子ちゃん一緒に地下まで来てくれんか、そうじゃ八兵衛も呼んできておくれ！

八兵衛：？？？？何事や！大工の仕事は5時までって決まってるんやで〜

月　子：いいから博士のワインが大変なのすぐに来てよ！

八兵衛：な、なんや地下に水でも入ったんか？

月　子：いいからすぐに来て！

シム博士：お、月子ちゃんに八兵衛よう来たの、ま座りなさい！

月　子：？？？何でそんなに落ち着いてるの、もしかしてショックのあまり....

八兵衛：あわてて来たわりには、えらい落ち着いてるやんか、月ちゃんどう言う事やねん。

月　子：あのねさっき博士のワインが全部腐ってるって教えてあげたの、そうしたら「一大事だ、八兵衛も呼んできておくれ」って言われて一緒に来たんだけど....
ひょっとしたら、ショックで頭が.....

八兵衛：ワインが腐ってるってどう言う事やねん！

月　子：こないだ地下を見せてもらったでしょ、その時に見たワインのほとんどに泥が溜まってたのよ、だから博士にワインが腐ってるって。。。

八兵衛：えっ、それは一大事や！
すぐに全部飲まんとあかんな。

シム博士：よっこらしょっと

八兵衛：博士、一大事やな早いこと飲んでしまわなあかんで！

シム博士：地下から持ってきたから月子ちゃんも一緒にどうじゃ

月　子：あ、それも泥が溜まってる、他にもいっぱい泥の溜まったワインがあったよ！

八兵衛：あのな月ちゃん、これはなワインの「澱（オリ）」って言うてな古いワインには必ず出てくるもんなんや。

月　子：澱？泥じゃないの？

シム博士：赤ワインの場合は黒い澱が出るから泥のように見えるが、白ワインにも同じように澱が出る、白ワインの澱は白に近い色の沈殿物となるのじゃ。

月　子：そうしたら、腐ってるわけじゃないの！

シム博士：健康じゃよ！
澱というのは、ワインの成分（酒石酸カリュウム、色素、タンニン）が時間と共に不溶性となり底に沈殿したものなんじゃ！これはワインが熟成によってまろやかになる過程で必然的に発生するものじゃから、何の心配もいらん。ノンフィルター（濾過しない）で瓶詰めされたワインには若くても澱が出ていることもある。

月　子：飲んじゃってもいいの？

シム博士：飲んでも何の問題もないが、ただ舌触りが悪いので折角のワインの味が損なわれる。出来れば澱が混ざらないようにグラスに注ぐのが理想じゃ！

澱は非常に細かく、一度舞い上がると沈むまでにかなりの時間が必要になる。例えば1万分の1ミリの澱が底まで沈むのには2ヶ月も掛かってしまう。
じゃから、澱が出ているワインを買ってきてすぐに飲むのはすすめられん！澱も一緒に飲んでしまうことになるからの。少なくとも1ヶ月は瓶を立てたまま保管し、落ち着いてから飲む方がよい！
必要が有ればデカンタに移すのも方法じゃ！

月　子：デカンタって何？？？？

八兵衛：それは次回にじっくりと教えたろ！